中小機構(独立行政法人 中小企業基盤整備機構)は中小企業の経営支援を目的に、さまざまな情報発信や支援サービスを提供してくれています。

その一つに経営自己診断システムというサービスがあります。

このシステムは、企業が自らの財務データを入力することで、経営状態を分析し、強みや課題を明らかにするためのツールです。

ただ紹介するだけではつまらないので、日経プライム市場に上場している大企業、トヨタ自動車、ソフトバンクグループ、ファーストリテイリングの3社を分析してみました。イメージとは異なり、意外な面が見られる面白い分析結果となりました。

経営自己診断システムとは

経営自己診断システムは、200万社以上の中小企業(うち7割は年商3億円以下の比較的小規模な企業)の財務データを基に、収益性、効率性、生産性、安全性、成長性などの指標を用いて、企業の経営状態を総合的に評価してくれます。

診断結果は、同業他社と比較することができ、倒産リスクの分析も行われます。登録不要で無料で利用でき、手元に決算書があれば10分ほどですぐに分析結果が出るので、気軽に活用できるのが特徴です。

トヨタ自動車の分析結果

トヨタ自動車の直近の通期決算は2024年3月期で5月8日に発表されました。

Head Head
売上高 45兆953億円
営業利益(率) 5兆3529億円(11.9%)
経常利益(率) 6兆9650億円(15.2%)

これら損益計算書と貸借対照表のデータを入力し、経営自己診断システムで分析した結果がこちらです。

トヨタ自動車の総合分析結果

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生産性が突出して高いです。これは従業員一人あたりの収益が高いことを示しています。また、効率性と安全性が低いのが意外ですね。詳しく見てみましょう。

トヨタ自動車の効率性は総資本回転率が低い

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まず、効率性ですが総資本回転率が最低ランクとなっています。貸借対照表によるとトヨタの総資産は90兆円。売上高が45兆円だったので、総資本に対し半分の売上ということで効率が悪いとされているわけですね。

また、棚卸資産回転日数も低スコアです。一方、販売は好調だったので、生産台数を大幅に増加させた結果なのだと推察されます。

トヨタ自動車の安全性は当座比率が低い

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次に、安全性です。流動比率、とりわけ当座比率が低いスコアで意外で面白いですね。低いとはいえ、トヨタは現金が9兆円以上あるので債務には困りません。

ある意味、必要最低限の現金だけ残して、生産や投資に全力投入していると考えれば非常に効率的な経営をしているとも言えます。トヨタほどの信用力が無いとできない芸当でしょう。

トヨタ自動車の倒産リスクは44点で警戒ゾーン

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ということで、面白いことに倒産リスク分析の結果は、警戒ゾーンとなりました。

これはギリギリまで資金効率を高めて経営をコントロールしている結果であり、トヨタの経営哲学を現しているようで、とても興味深い内容でした。

思ったより長い記事になったので、続きは別のポストで書きましょう。次は、ソフトバンクグループです。