中小機構が無料で提供している経営自己診断システムで、日経プライム市場の有名企業を分析してみよう。の最終回です。最後はユニクロやGUで有名なファーストリテイリングです。

ファーストリテイリングの分析結果

ファーストリテイリングの直近の通期決算は2023年8月期で10月12日に発表されました。

売上高 2兆7,665億円
営業利益(率) 3,810億円(13.8%)
経常利益(率) 4,379億円(15.8%)

ファーストリテイリングは8月決算なので、直近の通期決算が1年近く前の実績となります。

売上収益が前期比20.2%増と、3期連続で過去最高の業績を残し、2024年8月期の第3四半期決算では通期業績予想を引き上げ、4期連続の過去最高業績が確実となっています。

それでは通期決算資料から、経営自己診断システムで分析してみましょう。

ファーストリテイリングの総合分析結果

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過去最高業績を更新しただけあって、ダントツの収益性を誇っています。相対的に低いのが効率性です。

トヨタ自動車、ソフトバンクグループと共に効率性が低い結果が出ているのは大企業ならではなのかもしれません。詳しく見ていきましょう。

ファーストリテイリングの収益性は売上高営業利益率が高い

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評価が高い収益性ですが、売上高総利益率に比べ売上高営業利益率のスコアが高いことが目立ちます。

これは企業全体のコストがコントロールされているため、商品そのものの利益率(粗利率)よりも相対的に企業活動の利益率が高いことを示しています。

利幅の少ないカジュアルウェアを主力としながら、オペレーションの巧みさで利益を稼ぎ出すファーストリテイリングのビジネスモデルをよく表していますね。

これを3期連続、4期連続で継続しているファーストリテイリングの企業努力は素晴らしいとしか言いようがありません。

ファーストリテイリングの効率性は総資本回転率が低い

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総合分析結果でもあったように、トヨタ自動車、ソフトバンクグループと同様、注意が必要な指標として総資本回転率が上げられています。

ファーストリテイリングの総資本回転率は0.64回。総資本に対して売上高が0.64倍ということで、一般的には資本を活かしきれていないと見られます。

しかし、他の2社と同じく大企業はそもそも総資本が大きいものであり、毎年利益を上げ続けて設備投資をしてきた結果でもあります。

棚卸資産回転日数においても、製造小売業(SPA)でありながら62.43日と、事業規模の大きさに比べ2ヶ月で売り切っている結果は評価できます。

ファーストリテイリングの倒産リスクは82点で安全ゾーン

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最後に安全性評価による倒産リスクの分析です。82点と高得点で全く問題ありませんでした。

トヨタ自動車やソフトバンクグループと比べると流動比率、当座比率の割合が高すぎるため、やや資金効率の追求が足りないように見えます。

もちろん、一般的には現金保有比率を高めることが正しいのですが、ファーストリテイリングのような大企業の場合、大量の現金を余らせて活用できてないという見られ方もされてしまいます。

カジュアルファッションは競争の激しい業界ですし、景気や流行の変化にも敏感でしょうから、経営リスクを考えた結果なのでしょう。

現在のところ絶好調という状況ですが、今後の経営方針や投資戦略が気になりますね。2024年8月期の通期決算発表が今から楽しみです。

自社の業績で課題を感じておられる経営者はお気軽にご相談ください

以上、トヨタ自動車、ソフトバンクグループ、ファーストリテイリングと日経プライム市場の上場企業3社を、中小機構の無料サービス、経営自己診断システムを使って分析してみました。

大企業だけに実態に沿った結果が出ない面もありましたが、概ね使い勝手が良いサービスだと感じました。手元に決算書があれば10分程度で簡単にできます。

PDFで保存することもできるので、定期的に分析することも良いでしょう。また、競合企業の決算データがもし入手できるのであれば、このシステムを使って弱点を発見することもできそうですね。

分析結果が客観的にわかることは良いですが、要因解析や問題の対策にはやはり専門家のアドバイスが必要です。自社の業績で課題を感じておられる中小企業の経営者の方は、ぜひお気軽にご相談ください。